ロコモティブシンドロームとは
運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態を「ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome 略称:ロコモ)」と言います。ロコモが進行すると、介護が必要になるリスクが高くなってしまいます。
ロコモは筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、もしくは複数に障害が起こり、歩行や日常生活になんらかの障害をきたしている状態です。2007年、日本整形外科学会は人類が経験したことの無い超高齢社会・日本の未来を見すえて、この概念を提唱しました。
いつまでも自分の足で歩き、自身で日常生活を続けていくためには、ロコモの予防と健康寿命を延ばすことが必要です。
当院で行う治療
当院ではロコモティブシンドロームの方に対する筋力トレーニング、歩行訓練、転倒予防指導などを行っております。
ロコモの可能性が疑われる方、また将来のロコモが心配な方は、お気軽にご相談ください。日本整形外科学会公認のロコモティブチャレンジ内のロコモ度テストもおすすめです。詳しくはこちら
運動器は人の健康を支えます
人間の体は機能ごとに分業しています。酸素を取り入れて二酸化炭素を排出する“呼吸器”(気管や肺)、血液を流して酸素や栄養、老廃物などを運ぶ“循環器”(心臓や血管)、食物を消化・吸収する“消化器”(胃や腸)などは皆様もよくご存じでしょう。
人が自分の体を自由に動かすことができるのは、骨、関節、筋肉や神経で構成される“運動器”の働きのおかげです。骨、関節、筋肉はそれぞれが連動しており、どれか一つが悪くなると体はうまく動いてくれません。運動器は人の健康を支えている根幹と言えます。
運動器の健康を維持する重要性
健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とWHOが定義しています。現在の日本では平均寿命から健康寿命を引くと、男性は約9年、女性は約12年となっており、この期間は健康上に何らかの問題がある期間といえます。
要支援・要介護状態は健康寿命を考えるうえで最大の敵です。要支援・要介護状態になる要因の第1位は「運動器の障害」だということは意外にも知られていないと思います。
要介護、寝たきりは、本人に加え家族など周囲の人にとっても問題になります。自分だけでなく、家族や周囲の方のためにも、運動器の健康を維持することが大切です。
ロコモチェックをしてみましょう
- 片脚立ちで靴下が履けなくなった
- 家の中でつまずいたり滑ったりする
- 階段を上るのに手すりが必要だ
- 家のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用や、布団の上げ下ろしなど)
- 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である(1リットルの牛乳パック2個程度)
- 15分くらい続けて歩くことができない
- 横断歩道を青信号の間に渡り切れない
以上の項目はすべて、骨や関節、筋肉などの運動器が衰えているサインです。
1つでも当てはまればロコモの可能性があります。該当数ゼロを目指してロコトレ(ロコモーショントレーニング)を始めましょう。
ロコトレの行い方
ロコモにはいろいろなレベルがあり、十分に歩ける人と、うまく歩けない人では、ロコトレの行い方も違ってきます。自分に合った安全な方法で、まず「片脚立ち」と「スクワット」から始めてみましょう。
片脚立ち 左右1分間ずつ、1日3回行いましょう。
- ポイント1:姿勢をまっすぐにしましょう。
- ポイント2:支えが必要な人は、転倒に十分注意し、机に手や指をついて行いましょう(指をついただけでもできる方は、机に指先をついて行います)。
※床につかない程度に片脚を上げ、転倒しないように、必ずつかまるものがある場所で行ってください。
スクワット 深呼吸をするペースで5~6回繰り返します。1日3回が目安です。
足を肩幅より少し広めに開いて立ちます。つま先は30度くらい開きます。
膝がつま先より前に出ないように、また膝が足の人差し指の方向に向くように注意して、おしりを後ろに引くように体をしずめます。
スクワットができない時は、椅子に腰かけ、机に手をついて、立ち座りの動作を繰り返します。
- ポイント1:動作の最中は、息を止めないようにします。
- ポイント2:膝に負担がかかり過ぎないように、膝は90度以上曲げないで行います。
- ポイント3:太ももの前や後ろの筋肉にしっかり力が入るように意識しながら、ゆっくり行います。
- ポイント4:支えが必要な人は、転倒に十分注意し、机に手をついて行います。
ロコモを予防するには
骨量や筋肉量のピークは20~30代です。骨や筋肉は適度な運動で刺激を与え、適切な栄養を摂ることで、強く健康に維持されていきます。若いうちから運動習慣を身につけること、バランスの良い食事をすることがロコモの予防につながります。肥満もやせすぎもよくありません。
また、筋肉や骨と同様に、軟骨や椎間板にも適正な運動負荷が必要です。ただし、過度なスポーツや過体重による負担が大きすぎると、軟骨や椎間板は逆に傷んでしまうこともあります。